ブログ VOICE~心のとびら

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2014年04月04日

人生の軸 ②

人生の軸 ①の続き

 彼女の硬く閉ざされた心と身体からは、必死の叫び声が聴こえた。私は彼女の熱い声を受け取った。もう一度、気持ち良く歌いたい! 舞台で自由に自分を解放したい! そのために、発声と呼吸法を身につけ直したい! それをやらないと、死んでも死に切れない! と。そして彼女は指導機関を辞職して、楽器としての身体を作り直す作業に専念、集中する覚悟を私に伝えてくれた。大人になって覚悟をするのは、大きな勇気とエネルギーが必要と感じる。その時、彼女も私と同じで、人生の軸を呼吸法・発声法で捉えている事が解った。それならば、私の引き出しで良ければ全部あげる、と私も覚悟を持って真剣に答えた。心から、もう一度舞台で思いっきり輝いてほしいと思った。彼女なら本当の自分の姿で、以前よりももっと輝けると感じた。

そして、1年3ヶ月前から改造の作業が始まった。彼女も、歌い手として決して若い年齢ではないので、時間がない。プロの歌い手になるには、普通5年から10年かかる作業を約1年で何とかしなくては。そうだ、年が明けて私が関係している春のコンサートを目標にしよう。それに出演してもらおう。私の中にプランが出来上がった。

毎回のレッスンで変化、進化をする前提で時間が流れて行った。熟成を味わう時間もなく、どんどん進めて行く作業。彼女の不安と苛立ち、葛藤がひしひしと伝わって来る。でも淡々と、進めて行く作業は続いた。今も理由は解らないけれど、私の心は常に同じ未来を見つめ続けていた。

季節の移り変わりと共に、彼女は大きな変身を繰り返して行った。奇跡的な脱皮と進化の繰り返し。そして年は変わり、本番は近づいて来た。

年齢を重ねるにつれ、新しい挑戦や自己改革は大きなエネルギーを要し、心身に負担がかかる事も多いと感じる。若い頃は失敗してもすぐに切り替え、起き上がれるエネルギーが大きいが、年齢が高くなるにつれプライドの壁も厚くなるし、様々なしがらみもあり難しい事が多いと感じる。そんな中、本番前日までテンションを落とさずに頑張り続けた彼女の、ストイックなまでに歌に対する真摯な姿勢と努力に頭が下がり、感動した。

そして、本番。舞台の上には、軸が定まり決してぶれない彼女がいた。お客様をまっすぐに見つめ、まるで光を発するように歌っていた。超えた! もう大丈夫。感動と安堵が混ざり合った時間だった。

                                                          

この本番で、彼女の前に立ちはだかっていた厚い大きな壁は、粉々に壊れ、風に吹き飛ばされて消えた。本番の最中にも大きく成長する事ができると、よく言われる。本番という異常な緊張感の中では、自分の中の眠っているエネルギーが出て来る事が多い。このエネルギーを活かすか否かは、本人次第なのである。彼女は本物のコントロールの力で、完全にエネルギーを活かす事ができた。だから本番を終えてから、階段を5段も10段も一気に駆け上がる勢いで、今も進化を続けている。現在は、変化、進化したコントロールを身体に染み込ませるためのレッスンに変わって来た。

お疲れ様です。そして、ありがとう。私を信じてついて来てくださり、感謝いたします。私も、貴女の歌に対する真摯な姿勢、努力からたくさんの学びをいただきました。それは、私の大切な宝物となりました。貴女の覚悟ある生き方を、尊敬いたします。

蛹は蝶々に大変身しました。二度と、蛹に戻る事はありませんから。これからは自信を持って、自由に歌ってください。もう、十分と思うまで歌い続けてください。


貴女の輝く人生に乾杯!


Glück ☆☆☆〜   日本人離れした美声!  貴女の舞台、すっごく楽しみにしてるよ〜 ♡

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